他人三世代

マンションに住んでます。

「荒野のおおかみ」価値観一掃物語

ここ数日映画に当てる時間を読書に当て過ごしている。

 

荒野のおおかみヘルマン・ヘッセ高橋健二・訳/新潮文庫

 

何よりも「孤独」描写が素晴らしい。

それは「一人」でいる時を描くより、誰かといる時を描いた方がより一層「独り」を描けることに気づかせてくれる。

 

この本を選んだ理由は以前読んでいた本の引用に使われていたからだ。
引用文とその分析が、個人的に響いたので読むに至った。
 
 
題の意味は、ヘッセの写し鏡であろう主人公ハリーが、善良で道徳的な価値観に支配され囚われ続ける自分の中に、「荒野のおおかみ」という飼いならされていない悪い自分を肯定的なものとして見出すことによって、その支配を脱するという象徴的な意味を含んでいるように感じる。
 
それは同時に一つのモノの見方を描き、一つの生き方を掲示しているとも言える
 
社会に馴染めないアウトサイダーだと自己認識している人へ「違うモノの見方」もあるということを示してくれる話し。
要は先入観を取っ払って全て「ユーモア」を持って楽しめという……
そのために作中のヒロインの一人でもあるヘルミーネが、感覚的な生活の意義を、思索的に自虐的なハリーに教える構成になっている。
 
映画に比べ読書は、他の経験や話しとの「紐づけ」が多い印象。
読書を経て観る映画は、また違った気づきがあるかもしれないが。